雨にも負けて

11才の時、悪性脳腫瘍の手術を受け、放射線治療を経て生還した娘は、今 43才歳。術後、再発を防ぐため頭部全体と照射部分を縮小しての照射と転移を防ぐため脊髄への照射、それら詳細を記したえんじ色の表紙の手帳がある。頭部に14回、縮小して8回、合わせると頭部に22回の放射線治療を受けている。患部は小脳近く。転移を防ぐために脊髄への照射が13回。他に週1回インターヘロン注射4回。

これだけの治療のお陰で、今、命があるのだから、あるのは、感謝である。照射による後遺症など言葉になどできない。7年過ぎた頃から、眼に異常が起きても、耳はいつも耳鳴りがしていても、それはたくさんの照射で「視神経も耳の神経もボロボロになってもう治らないよ」とそのころ通院していたおひげのU先生に言われて、それっきり直らないならと通院拒否して、(何年かして おひげの先生はお亡くなりになったと 気にかけていてくださったと 手術してくれた時のI先生か聞いたのだけれど・・。)

少しも困っていないような顔している。

5年に1回ぐらい検診に行く

千葉大病院のI 先生にも
困ってることなにかある?って

問われてもいつも

ありません。と

こたえる あとで

どうして?と聞くと、

眼がちゃんと見えるって、どんなことなのか

耳がちゃんと聞こえるって、どんなだったか

思い出せないから、わからないのだと

わたしはこれがふつうなのだと

あの頃の黒髪も

30年余りたっても戻ってこない。

母の願いをかなえるために買うのだと買ったウイッグ

そのまま時のたつのを待って破棄したり 

必要としているところへ届けたりして 

ありのままがいいのだと。

その娘(こ)が、無一文の母と暮らすようになって 

世間知らずは怖いものもなくて

誰に似たのだろう 誰かに 

お仕置きをしているのだろうか

会社に行く時は早起きして
帰りが遅くっても
お休みを楽しみに出勤して行く  

そも娘(こ)が ある日 弱音を吐いた 

「この詩にわたしも 『いいね!』したいけど

できないんだね。わたしとおんなじ・・いつも・・・」

ふり向くと陽だまりに読みかけて置いたままの

「月刊・ココア共和国・11月号」だった
その詩には、秋吉久美子さんも

「こりゃいいね!」している

西宮ケイさんの「雨に負けて」と言う詩だった。

これは「お母さんの!」と決めつけるように

敬遠されていた詩集と言う本 その本を

何気に手にして出会った

この一篇の詩に、

いいね!

したいと言った。

あの時のあの娘(こ)の笑顔は

陽だまりの中にとけてしまいそうだった。

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  長いのではじめの方だけですが、こんな詩です。

     (2022・ココア共和国・11月号より)

「 雨にも負けて」 西宮ケイ

   (*宮沢賢治を冒涜しているわけでは、決して、決してありません!)

  
  雨に負けて

  風にも負けて
  
  雪にも夏の暑さにもうんざりし

  丈夫な体など夢のまた夢

  欲はあっても実現するための金がなく

  決して怒らないせいでなめられ

  いつも静かに笑っていると「薄気味悪い」と陰口たたかれ

  1日に米三合と納豆と少しのサラダを食べ

  あらゆることで自分を押し殺しては損をし

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  苦情はたくさん浴びせられ
  
  そういうものである

  私はなんだ

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今日もヘリコプター仰いで子供みたいだ。